(タイトルは特に決めていない)

京央惨事(ケイオウサンジ)コラム過去ログ書庫。

質問:好きな小説と漫画なんですか?

今回は質問箱にお寄せいただいたものから、こんな話題です。

 

こんばんわ。
舞台は今後も聞かれる事があると思うので
おふたりの今まで見た中のベストオブ
1.小説 2.漫画
3.ドラマ 4.映画
を教えてください。

 

 

ということで、この場をお借りして

我々の好きなものものについてぺらぺらと喋ってしまいました。

 

 

今回は前編!

「小説と漫画」について

 

 

 

 

小説編

 

のずり:最近読んでる? 活字

南帆子:あまり読めてないなぁ……。

のすり:私も実は、新しいのは読めてないんだよね。一番読んでたのっていつくらい?

南帆子:小学生の頃ですね。通信簿に「読書のし過ぎで友達がいないのが気になります」って書かれた(笑)

のすり:よっぽどだな(笑)

南帆子:私ア

レなんですよ、好きな小説を何度も読み返しちゃうので、なかなか新しいものに手を出さないんです。

のすり:私もそう。同じものばかり読んじゃう。あと一人の作者が好きになったらその人の書いたやつばかり集めちゃう。

南帆子:その現象分かる。作者買いしちゃうよね。鐸木さん、その中でも一番好きな小説は?

のすり:江國香織きらきらひかるです。

 

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のすり:それこそ私の本棚ほぼ江國香織

南帆子:それ私も好き。というか、それ鐸木さんちで鐸木さんの本棚から勝手に手に取って途中まで読んで、帰りに自分で買いました(笑)

のすり:買ってたんだ(笑) 私、初めて読んだ江國作品がそれで。中学の時に図書室で借りたんですよ。中学生には衝撃的でした。

南帆子:江國香織さんの世界って、決して明るくはないけど輝いてますよね。世間一般的に見て希望があるわけでは決してないけど、切ない希望というか。それに縋る人間像というか。

のすり:そうだね、決してハッピーではない(笑)でもそこにすごい現実味があるというか。うまくいかないことが当たり前で、でも世界は美しいなあと。「きらきらひかる」は夫婦の話なんだけど。アル中で精神不安定な妻と精神科医でゲイの夫とその夫の恋人の話。この人間関係がたまらない(笑)

南帆子:その妻と夫と恋人と、みんな報われない人間関係の中で、最後はなんというか、“自分たちだけの世界”を作っちゃうじゃない? それが何とも美しく切なく儚くて、まさに「きらきらひかってるなぁ」って思った。

のすり:ていうかこの三人仲良しなんだよね。よくある「ドロ沼」ではない。でも、「世間では許されないこと」だからなかなか理解が得られなくて苦しむんですよ。私も、初めて読んだのが中学生だったから、やっぱ単純に「結婚してんのに恋人いていいの!? (しかも男!)」って思った。それなのにこの三人は成立しているんですよ、関係が。誰か欠けたら寂しいんです。人間関係の在り方が、いい意味で、ぶっ壊された時でした。

南帆子:そうね。でも妻は辛いよなぁ……仲良しなのが辛かった。誰かのせいにして憎めればいっそ楽なのに、夫のことも夫の恋人のことも見限れなくて、結局アルコールという成分に頼って生きていて。でも三人だからこその世界で生きていて。そこに自分も確かに参加しているわけで。世間様から見れば決して健康的な人間関係ではないんですが、それでも彼らが生きているのはその世界で。

のすり:お。南帆子は笑子目線で読んでいたということか。私、睦月も紺くんの気持ちも分かるんですよ。笑子と睦月でも、睦月と紺君だけでも、きっと関係性が破綻してたと思う。二人で解消できない関係性を、もう一人が入ることで中和している。だから、
なんかバランスが本当に絶妙。すごい危なっかしい。その感じが、すごい繊細で、そこが魅力的な作品だと思います。

南帆子:うん、私は初めて読んだのがもう二十歳を超えてからだったし、女性なので。笑子に一番。でもそうだね、危ういバランスだよね。その危うさが美しいんだね、きっと。

 

* * * * * * * * *

 

のすり:そろそろ南帆子の好きな小説を。

南帆子:好きな小説……迷いますが……。金原ひとみ『アッシュベイビー』ですかね。

 

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のすり:来ると思った(笑)

南帆子:桜庭一樹『私の男』太宰治人間失格とも迷いましたが(笑)

 

 

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落選された方々

 

 

のすり:「私の男」は未読ですが、どれも個人の葛藤が激しいイメージ。

南帆子:『アッシュベイビー』はですね、高校生の頃に初めて読みまして。意味分からなくて泣きましたね。「なんでこんなに辛いのに人間生きてかなきゃならんのだ」と。

のすり:いやほんと、アッシュベイビーはツライ(笑)私は南帆子に借りて何年か前に読んだけど、大人でもツラい。高校生でよく読んだね。

南帆子:あれね、当時書店の手違いで、官能小説の段に陳列されてたらしくて。友達が官能小説と間違えて買ってしまったのよね。「やる」って言われて、私が貰い受けたんです(笑)。ざっくりあらすじを説明しますと、キャバ嬢でビッチの主人公と、その同居人である男(主人公の恋人ではない)と、主人公が本気で愛してしまった男性の話です。その関係性の中で、ペドフィリアや同性愛者が描かれています。

のすり:男がまたね……ヤバい性癖をお持ちで。

南帆子:ヤバい性癖の持ち主しか出てきません(笑)

のすり:若いうちに読んだらトラウマになるんじゃないか。それくらいに描写が過激。

南帆子:でもね、なんていうんですかね……その、性癖の対象をぶつけられる相手がいるということが、それを好きな人から向けられるということが、とても「救済」に見えたんですよね。この世に自分を受け入れてくれる人が居る、自分を求めてくれる人が居る、ということが。でもやっぱりそれは他者からは受け入れられないし、自分が受け入れられない他者もいる。救済と絶望が両面価値的に語られていて。でもたったひとつ言えるのは、主人公のアヤは好きになってしまった男性へ純愛を向けていたこと。それにも泣いてしまった。こんだけ無秩序な物語の中で、ただただ純愛だったこと。

のすり:のすり:行動が極端なんだよなみんな(笑)でもそれは人物たちが一途だからなのかなひたすら。だから純愛なんだよね。金原ひとみさんといえば蛇にピアスが有名だよね。

 

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映画化もされてます

 

南帆子:『蛇にピアス』もさ、純愛だと思うのね。もう金原ひとみさんの女性としての価値観なのかも知れない(笑)

のすり:金原さんの作品は、金原さんが身を削って書いてる感じがもうヒシヒシと伝わってくる。モノローグの激情が。良くも悪くも女のイタさを突きつけられてツライ。でもその感情パターンが理解できてしまうところもまたツライ。ツライツライって思いながらもページをめくってしまう。

南帆子:もうホントそれな(笑)。女が剥き出し過ぎて、これに共感してしまう自分も女だなってめっちゃ思わされる。金原さんの作品は女の肉塊だよね。その中でも『アッシュベイビー』はもう、金原さんの、もとい、女の叫びにも思える。

のすり:それでいてアッシュベイビーって唐突に終わるよね。もう放心した。

南帆子:いきなり終わるよね、あの小説(笑) 希望も絶望もないままに、句読点すらないまま唐突に終わる。あの終わり方は、「女は女のまま、涙と血を流しながら生きていくしかない」って突き付けられてる感じする。

のすり:さっき「女剥き出し」ということを言ってたけど、いうてもね、江國香織もめんどくさいよ(笑)江國さんて、あんまり女剥き出しな表現はしないんだけど、気付いたらズタズタなんだよね。「えっ、さっきまで普通にしてたじゃん」みたいな。 だから側からみて、何も起きてないで終わったって見える場合もあるんだけど、確かに主人公の中には激情が起こって通り過ぎていて。
文章の吐き出し方は全然違うんだけど、たぶん両者とも女である事のめんどくささは通づるものがあると思う。

南帆子:そうね、女性って面倒くさいからね……っていうのが、お二人の作品ではつまびらか。でもその面倒くささに共感してしまうのが、自分も女なんだよなぁ……面倒くさい(笑)

 

 

* * * * * * * * *

 

漫画編

 

南帆子:小説の話から察すると、鐸木さんはどちらかというと漫画も少女漫画の方が好きですか?

鐸木:私けっこう漫画に関して節操ないと思ってたんだけど、本棚見返すと少女漫画多いね。

南帆子:私半々だなぁ……。

のすり:少年と少女半々?

南帆子:うん。えっと、少年漫画って長いのが多いでしょ? 少女漫画は10巻もあれば長いけど。作品数的には少女漫画の方が多いんだけど、冊数的には少年漫画と少年漫画と半々。

のすり:うちは、今は青年誌系が多いかもしれない。週刊誌コミックスより、ちょっと型デカイやつみたいのが多いね。

南帆子:おもむろに所持している漫画の冊数数えたら、579冊ありました(笑)

のすり:その貯蔵の中で、好きなの選ぶとしたらどれ?

南帆子:(逡巡)……。……銀魂フルーツバスケット進撃の巨人……(ものすごく逡巡)……(更に逡巡)……でも今一番アツいのは進撃の巨人かなぁ……。

 

 

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のすり:南帆子の好きな漫画って分かりやすい(笑)

南帆子:どういう意味で(笑) 分かりやすい単純な内容ってこと? じゃなくて統計的に私の好きな漫画の系統が分かりやすいってこと?

のすり:系統だね。女子が絶対に一度はハマるであろう漫画を、確実に押さえてきている。私も銀魂は高校生の時すごい好きだったし、フルバは今も本棚にあるよ。

南帆子:あー、なるほ。銀魂とフルバはそうだよね。『進撃の巨人』は私にわかなのであまり分からないけど、女子人気なの? 結構私の周り、男子人気が高いかも。

のすり:女子人気もスゴいよ(笑)進撃の巨人って、読む人読む人みんなハマっていく印象だけど、南帆子はどこにハマったの?

南帆子:んっとね、単純に、1巻読み終わるじゃない? 2巻が気になるのね。2巻が読み終わったら3巻。もうそれが24巻までずっとずっと続く。「今物語の一番の見せ場じゃないの!?」がずっと続く。ずっと面白くて。ひとつ謎が解ければひとつ謎が増えて、また真実に近付いて。あとは、限界まで追い詰められた人間の描き方かな。人間として生きるのか、家畜として生きるのか、みたいな。

のすり:へー、よくできてる。

南帆子:案外『進撃の巨人』は頭脳戦なんですよ。肉弾戦だけでなく。思考力や洞察力なんかも必要で。派手な世界観の割に、人間描写が緻密なんですよね。

のすり:私なんか、あんまり騒がれている漫画って、手引っ込めちゃうって言う悪いクセがありまして……。

南帆子:私は漫画に関しては基本的に人からオススメされて手を出すので、人から騒がれてる漫画を読みやすいってところはあるかも。その中でも進撃だけはたまたま自分で手に取ったけども。割とアニメで観てその原作だったり、人からオススメされたり。

のすり:進撃の巨人、聞いてるとヴィジュアルメインってより、内容がありそうで面白そう。頭脳戦、人間描写好きだったらHUNTER×HUNTERもぜひ読んでほしいですね。

南帆子:ハンハンも10巻くらいまでは持ってる。ハンハンて今何巻まで出てるんだっけ?

のすり:ハンハンて略すの初めて聞いたんですが!(笑) 34巻だね。

南帆子:え、略し方ハンハンじゃないの(笑)!? 34巻。集めようと思えば集められる巻数なんだよな、まだ。

 

 

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ハンハン

 

のすり:自分で手に取った漫画って他にはないの?

南帆子:小学生とか中学生くらいの頃は自分で手に取ったりもしたけども。

のすり:小中の頃は何読んでたの?

南帆子:りぼんが多かったね。小花美穂種村有菜の黄金期。

のすり:こどちゃとジャンヌですね。

南帆子:代表作。私は『アンダンテ』と『満月をさがして』が好きでしたがね。まあその他も、りぼん誌上で連載されていたそのお二人の単行本は大体持ってます。

 

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小花美穂の代表作二つ。少女漫画とは思えないシリアスさ。
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私たち世代のりぼんといえば種村有菜様。すごいきらきらです

 

 

 

のすり:私漫画は大体気が済むと売っちゃうんだけど、でも未だに持ち続けてる漫画はフルーツバスケットと、『魔法陣グルグルと『ハチミツとクローバーだね

 

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南帆子:フルバとハチクロは所持してる。グルグルは知らないなぁ……。 今挙げてる漫画の中に鐸木さんの一番好きな漫画はもう出てる(笑)?

のすり:正直、一番が決められないでいる(笑) けどやっぱりハチクロ好きですね。

南帆子:いやぁ、ハチクロは良いですよね! 江國香織好きでハチクロ好きってなると、鐸木さんの系統も分かりますね(笑)

のすり:なんかこじらせてるでしょ(笑)

南帆子:何というか、その世界観の印象だけで話をすると、鐸木をものすごい女子として捉える方々がいそうなんだけど。なんかちょっと違うんだよね。その作品性を女性ならではの視点から面白がってはいるけど、コイツこじらせてますからね。

のすり:こじらせっていうかね、やっぱり葛藤が好きなんです。それも出来れば共感できる葛藤。だからこういう日常群像が好き。あとハチクロは「美大生・青春ラブストーリー☆」ってパッケージあったけど、ぜんぜんそんな甘々な感じで済まないし(笑)とにかく葛藤がすさまじくて。

南帆子:たぶん、そのパッケージだけでハチクロを捉えていると、鐸木さんの印象も操作されてしまうのよね。ハチクロも江國さんも、いわゆる恋愛至上主義作品ではないし、全く以て甘くはないと付け足しておきたい。

のすり:なんだかんだ好きな漫画恋愛系ばっかなんで、女子力バキバキの脳みそをしてるのか、と言われたらそういうわけではないです、かね?(笑) でも恋愛って、人間がもっとも取り乱す要因じゃない。自分が自分でわからなくなったり、めちゃくちゃなことになったり。それがやっぱ面白くて、恋愛もんばっか読んじゃう。ハチクロの、五人で観覧車乗るとこ、好きなんだよね。

南帆子:地味なシーンだな(笑) 五人がそれぞれ居心地悪いシーンね。

のすり:真山←山田、竹本→はぐみ←森田、っていう関係にある人たちがそれぞれチーム分けされて観覧車に乗せられるんだよね。でめっちゃ気まずいっていう。それでその空気に耐えきれずに森田さんが観覧車をぶんぶん揺らしてしまう→「わーやめろー!」→ 大混乱なる。まさに取り乱してる(笑) あの空気感は誰しも経験したことのあるやつだと思うんだよね。

 

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ハチミツとクローバー三巻より。大混乱の図

 

のすり:たまらん。

南帆子:鐸木さんは、そもそも普通の女子らと『恋愛』の捉え方が違う、というか。恋愛=幸せいっぱい甘々生活、とは真逆に捉えてると思うんだよね、鐸木さんは。恋愛て苦しいじゃん。自分以外の、血も繋がらない赤の他人のためになんでこんなに心を遣ってしまうんだって思う。でもそれが恋愛だと思うので。

のすり:恋愛は苦しいね、面倒くさいし(笑)でも、嬉しいことがあるとすべての苦しみを凌駕してしまう。他人のことばっか考えて空回りしちゃう。ハチクロはそういう人たちが本当によく描かれていると思う。

南帆子:そうだね。ハチクロ読んでると、人を好きになるって大変な労力だと思うよ。そこに心を割けるってことが。自分自身がつい四カ月前までやっていたこととは思えないね、恋愛というものを(笑)

のすり:そういう意味で恋愛もんは面白いです。まだ上げたい漫画あるんですが……終わらんね

南帆子:終わらんね。次行きましょうか。

のすり:またそのうち

 

 

本日はここまで!

次回は『ドラマ・映画編』 

(2/23更新予定)

 

 

 

 

※質問箱について※

大変ご好評いただいておりました質問箱ですが、諸事情(手が回らん等)により一度休止させていただく運びとなりました。大変申し訳ございません。

まだ返答していない質問につきましては、当ブログ上にてなんらかの形で回答していく予定です。お待たせしているところ更にお待たせして申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちくださいませ。

お便りやご質問等ありましたらDMからお送りください。随時受付中でございます。

 

京央惨事