話題:帰りたい vs 帰りたくない
のすり:昨日夜さ、南帆子からライン来たじゃん? 22時くらいに。
南帆子:はい。
のすり:「バイト終わったけど帰りたくない」って。……あれ、どういうこと?
南帆子:帰りたくなくなっちゃったんだよね。
のすり:バイト終わったら帰りゃあいいじゃん。
南帆子:なんかねー……22時、過ぎる、とね……家に帰るのもったいねぇなって思っちゃうんですよね。
のすり:昨日はちなみにあの後、帰ったの?
南帆子:きちんと帰りました。
のすり:終わって結構いたの? 仕事場に。
南帆子:30分くらい。ぼーっとしてましたね。
のすり:いやでもそういえば、いた。昔、飲食のバイトしてた時とか。ずっと控室にいる人いた。
南帆子:いるでしょ。
のすり:いたいた。なんで帰んねぇんだろうなって思ってた。私はもうね、速攻帰りたい人なのよ。
南帆子:家が好きだからってこと?
のすり:なんか、用がない所にそのままいられない。だってバイト終わったんだからさ。作業がないのに何故いるのかっていう。
南帆子:「遊びたいから」です。遊びたいから以外に何の理由があるんですか。
のすり:遊びたいからか……。
南帆子:楽しいことをずっとしていたいんですよね。
のすり:でも別にバイトが楽しいわけでもないでしょ。
南帆子:バイト先の人は好き。
のすり:バイト先の人と話したいとか。
南帆子:遊びたい。
のすり:遊びたいの。カラオケとか?
南帆子:カラオケオールしたことありますね。
のすり:なんか言ってたね。社員の人とね。
南帆子:そう。社員の男性二人と、バイトの女の子一人(花岡)で、カラオケオールですよ。しかも三人とも次の日仕事あるんですよ。楽しかったですよ。楽しいんですよー。みんなといるのが。
のすり:まあ楽しそうだけども。
南帆子:……でもね、あの、「みんなと」って言ってもね、三人までなんです。
のすり:三人まで?
南帆子:出来れば、二人。同性と二人。同性だったら自分も入れて二人まで。か、四人ね。三人ダメ。異性だったらまあ、三人、四人。
のすり:なんとなく分からなくもない。
南帆子:そうそう。
のすり:……でも、一人はダメなんだよね?
南帆子:一人はダメ。
のすり:それが面倒くせぇんだよ! それが面倒くせぇんだよ!*1
南帆子:だって一人楽しくないもん。
のすり:そうだけどさ。「終わって早く帰りたい側」としては「遊びに行こう。一人やだから」って……こっちの身にもなって下さいって感じですよ。
南帆子:いやだって、一人楽しい?
のすり:好きだよ。昔ほどではないが。
南帆子:でしょ。
のすり:最近、ちょっと寂しいね。一人で何すればいいか分かんないね。
南帆子:それなんですよ! でも、勘違いしないで欲しいのは。一人の時間も、欲しいんですよ。
のすり:あー難しいなこれ。
南帆子:その、「一人の時間欲しい率」が、たぶん、私と鐸木さんは違くて。
のすり:うん。
南帆子:たぶん鐸木さんの方が、時間が“1”あるとすると、“0.8”は「一人の時間」で、残りの“0.2”を誰かと過ごせれば良いんだと思うんですよ。
のすり:もうまさにそれくらいの比率。
南帆子:私「一人の時間」なんか“0.3”くらいで良いんですよ!
のすり:短けぇ!
南帆子:あとの“0.7”は誰かといたい。
のすり:人好きなのかな、やっぱり。
南帆子:そうかもね。
のすり:今は在宅で仕事したりとか、個人の作業が多いんで、ちょっと「一人はもういいや」って気持ちが出てきたりありますけど。でも飲食のバイトしてた時。飲食って嫌ってほど人と絡むじゃん。その後にまた人と接するってのは、しんどい。「もう一人にしてくれ!」ってなっちゃう。
南帆子:あー。
のすり:8時間くらいバイトをした後は、もー帰りたい。
南帆子:でもだって、バイトしてる時の人間とさ、バイト終わった後の人間って、全然違うじゃん。バイトしてる時はもう、「楽しくねぇな」って思いながらバイトしてても、バイト終わった後に作る人間関係がさ、「あ、これ楽しいな」ってなる時があるわけですよ。それは、演劇然りですよ、
のすり:まぁね。確かに高校生の時は、バイト終わってから同い年の同僚とそれこそファミレス行って駄弁ってみたいなあったけど。なんだろね、その、最近……長時間、話すっていうのが、段々しんどくなって来てるっていうのがある。
南帆子:歳?
のすり:(ぐっ)……なんか、あるね。
南帆子:へー。
のすり:あと分かんないけど、人と適度な距離を取りたいって思ってるのかも知れない。
南帆子:でもそれは、私もそうだよ。で、私の場合、バイトがさ、電話対応*2とかだから。まあ私、電話対応ものっすごく上手いんですけど。
のすり:ほほ。
南帆子:ええ。めちゃくちゃ電話対応上手いんですね。*3
のすり:ええ。それはそう思います。*4
南帆子:すごく上っ面の言葉遣いとか、やっぱりするんですよ。そこでたぶん、人間と接するときに、ものすごく気を張っているんですよ。
のすり:ふんふん。
南帆子:だから解放されたときにその、「気を張らない人間関係」でハメを外して楽しみたいんですよ。だから別にバイト先の人じゃなくても良いわけさ。それこそ鐸木とか。高校時代の友達でも良いんだけど。
のすり:(だからラインを寄こすわけか。)
南帆子:ていう気持ち。で、帰りたくなくなる。
* * * * * * *
のすり:結構さ、うち来た時もさ、全然帰んないよね。
南帆子:帰んない。
のすり:ほんと帰んないよね。
南帆子:帰んないね。
のすり:飲み会もさ。最後までいるよね。
南帆子:何だかんだね。
のすり:オールとかも結構あるでしょ。
南帆子:オールする流れになれば全然。いるね。
のすり:それこそ、私、最近オールが本当しんどくて……。
南帆子:体力的に?
のすり:それもあるし、もう、0時になったら帰りたい。
南帆子:なんで? 眠いの?
のすり:眠いっていうか、「これ以上自分がいたところでな」って思っちゃう。
南帆子:私は何かね、あれ。あの、私が帰った瞬間みんなが私の悪口を言い始めるんじゃないかっていう不安。
のすり:そんなことねぇだろ!(爆笑)
南帆子:そういう恐ろしさがあって、残ってしまう。
のすり:超被害妄想!!
南帆子:お互いちょっとね……被害妄想が過ぎるんですよ。
のすり:何か、何だろうな。何か、オールした後とかにさ。後悔することとか、ない?
南帆子:ない。
のすり:ないのか!
南帆子:ない。
のすり:「0時で切り上げてもオールで切り上げても、なんか、一緒だったな」っていう。
南帆子:ない。
のすり:(ぐっ)……そうか……。
南帆子:うん。私はないね。だってオールした方が楽しいじゃん。
のすり:楽しめてるなら良いと思う。
南帆子:寝るよね、鐸木さんはさ。いつの間にか事切れてるときがある。
のすり:そう。体力ねぇのかな。最近は終電でなるべく帰ろうとしちゃいますね。それがちょうど良い気がして。そこで切り上げるのが。
南帆子:私は、終電前になるとそわそわし始めるんですよ。「え、みんな帰るの? みんな帰るの? みんな残ろうよ残ろうよ……!」みたいな気持ちになってくるんですよ。
のすり:だってさぁ、終電逃す率高いよね?
南帆子:高いです。
のすり:また逃したの!? って。
南帆子:ありますね。
のすり:終電調べる気ないでしょいつも。*5
南帆子:ない(きっぱり)
のすり:本当勘弁してくれ!!
南帆子:いや、調べて、把握して、わざと逃すときもある。
のすり:何でだよ!! 「あ、これ今日終電で帰る雰囲気だ」ってときもあるじゃん。
南帆子:あるある。
のすり:逃すよね。
南帆子:いやそういう時は帰るよ。ただ逃すときも……無きにしも非ず。
のすり:もーさあ。何なんだろうかね、それ。
南帆子:いやあの……私は、仲の良い人たちとであれば。だから、人による、よ、それは。オールする時に。鈴木良尚*6とは絶対にオールしない。
のすり:もういいわ鈴木良尚は!!*7
南帆子:人によるけれども。「居心地良いわー」ってなれば、オールしてたい。「居心地悪いな……」って思ったときには、さっさと帰ることもある。そこは一応、ちゃんと選別はする。
のすり:あ、じゃあいつも終電逃すタイミングの時は、「この人たちともっと一緒にいたいな」ってときなのか。
南帆子:そうそうそう。「もっとずっとこの人たちと楽しいことしてたーい」ってときには、逃しますね。
のすり:(責められない)……あーでも……私も帰りたくないっていう時期も、あったよ。でも、多感な頃ですね、中学とか、高校とか、大学とか。
南帆子:うんうん。
のすり:なんか、普段の日常に戻るのが嫌だ、みたいな。それが、終わってしまうっていうのは、何かね。寂しさってあるよね。
南帆子:そう。だからずっとディズニーランドにいたいっていう気持ち。
のすり:でもディズニーランドが2~3日続いたらさ、飽きない? さすがに。
南帆子:いや飽きる時もあるだろうけど、飽きるまでいたい。
のすり:でもさ、例えばディズニーランドに、2~3日いたとします。たぶん、2日目までは楽しいと思うの。でも3日目って、もう、惰性でいるみたいな感じにならない?
南帆子:なると思うよ。
のすり:私はその惰性の前に帰りたい。
南帆子:だからその、惰性になるまでの時間が、私はちょっと長い。
のすり:それは幸せかも知れない……。
南帆子:私はオールした後も、何だったらちょっと朝喫茶とか寄ってから、の、昼頃になってファミレスに行って、からの、じゃあ夕飯まで一緒しちゃうかってなってから帰りたい。
のすり:長げぇ!!
南帆子:はい。
のすり:その、「惰性」になってから、「あ、惰性だな」って思いながら終わるのが嫌なんだよね。だったらもっと早い段階の楽しいうちにバスン! って切りあげた方が、「楽しかった!」って思い出しか残らない。それが、ちょうど良い。
南帆子:だから、私はその「楽しかった」って感じるところまでが長いだけだって。
のすり:分かった。そのスパンが、私だんだん短くなって来てる。
南帆子:あーはいはい。
のすり:大学時代まではたぶん、耐えられた。最近はもう、何かの終りの後に、飲みに行ったとしてももう、0時。0時くらいが。
南帆子:シンデレラかよ。
のすり:その日の0時が、私の「楽しかった」のピークなんです。その後のオールの時間は、私の中で「惰性」ってなってきてる。から、0時で帰りたい。「楽しかった!」で終わって、区切りを付けたい。
南帆子:じゃあその「楽しかった!」が、どれだけ楽しくても0時で切りたいの?
のすり:う゛う゛う゛ん。
南帆子:もう、ものすごく、ものすごく楽しかったとして、でも終電まであと5分! ああでもものすごく楽しい!
のすり:……ものすごく……あああどうしようか……どうするかな……いや……。
南帆子:やっぱり0時では切りたい?
のすり:……ものすごく楽しかったら、いるかも知れない。
南帆子:うん、楽しませなきゃいけないね、周りが鐸木さんを。
のすり:(全力で)やめて! そういうのやめて!!
南帆子:そういうことになってくるわけだよ。
のすり:そういうことじゃない! そういうことじゃないんだ! そしたら私はもう「0時になったら何が何でも帰る女」になる!
南帆子:(爆笑)
のすり:“どんな事例でも”、0時がちょうど良い。
南帆子:日を跨がないっていう。
のすり:そう! でもほんと、昔は大丈夫だったのがさぁ。
南帆子:つまんなくなって来てるんじゃない? なんか。色んなことが。
のすり:え。
南帆子:色んなことを知り過ぎてさ、「これ以上いても目新しいもんねぇし、つまんねぇな」ってことがわかって来てるんじゃない?
のすり:そういうこと? ……なんか、パターン化してるってこと?
南帆子:そうそう。
のすり:……自分と言う人間がつまらないもののように思えてくるよ。
南帆子:なんだそれ。
* * * * * * *
のすり:私、最近、ひとっ所にずっといるっていうのが出来なくなってきて。
南帆子:自分の家以外ってこと?
のすり:自分の家も。
南帆子:なんで!?
のすり:なんか、息が詰まる。
南帆子:外に出たいってこと?
のすり:外に出たくなる、し、自分の部屋に飽きるんだよね。
南帆子:それはね、ないんだよ私。逆に。自分の部屋は、もーねー、いつまででも寝ていられる。ごろごろして、飲み物たまに飲んで、漫画読んでケータイいじって煙草吸って。いつまででもいられる。ただ、私の自室はテレビがないので。あと、冷暖房機器がないので。
のすり:冷暖房機器……それは大変ですな。
南帆子:それすら揃っていたら、私は引きこもりになります。「自分の居場所」「ここは私のテリトリー」って思ってるところであれば、すごく居心地がいいんですよ。居心地がいいんだけど。そこに帰る前にちょっと楽しいことを、したいんだよね! その楽しいことをして、「はー楽しかったー疲れ切ったー」って帰って来て、「ああ、楽しかった!」っつって、寝たい。
のすり:ふむ。そうなるまで帰りたくないっていう。
南帆子:そうそう。なので、気持ちよく帰るために帰りたくないんです。
のすり:まったくもって迷惑な……。
南帆子:ねえ鐸木さん。
のすり:はい。
南帆子:お腹空いたー。
のすり:はあああ!!?? 今!?
南帆子:お腹ぎゅるぎゅる鳴ってる。クラッカーちょうだい。
のすり:(クラッカー投げ)食っときなさい!
南帆子:わーい! クラッカー!
のすり:エサだ! エサ!
~南帆子のエサタイム突入のため、
『帰りたい vs 帰りたくない』おわり~
↓以下、脚注↓