(タイトルは特に決めていない)

京央惨事(ケイオウサンジ)コラム過去ログ書庫。

話題:鐸木家と花岡家

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のすり:うちさ、実家のLINEグループがあってさ。

 

南帆子:はいはい。

 

のすり:私は離れて住んでるから見てるだけのことがほとんどなんだけど。なんか、どういう生活してるかが見えてくるわけ。家の。

 

南帆子:はいはい。

 

のすり:そうするとね。うちって、外食をよくしてて。週末、土日とか「何食べる?」って会話をしてて。あ、食べに行くな。行ってるな。って分かるんだよね。週三くらいで行ってるんじゃないかな。

 

南帆子:家族でってこと?

 

のすり:そうそう。たまに私が家族と会う時も、外で食べること多い。先週も会ってみんなで小籠包食べて帰ってきたりして。で最近、沖田もご飯一緒にって機会があって。そうするとね、沖田がわりと、びっくりする。びっくりするというか、珍しがるというか。

 

南帆子:私もその感覚かも知れない。

 

のすり:やっぱそうなんだ。だから「あ、うちの家族って外食一家なんだな」って最近になってわりと思ってて。花岡家はそんなに外食しない?

 

南帆子:いや、家族で外食に行くなんて……旅行のときとか。

 

のすり:そーゆう頻度なんだ。

 

南帆子:うん。旅行のときとか、あとは……何か法事とか。本当にそれくらいで。そんな週末毎とかは。むしろ週末になれば、母の、ちょっとグレードアップした手料理が食べれる。

 

のすり:や、これ本当にさ。南帆子んちの母の料理はすごいよね。めっちゃ美味い。

 

南帆子:私も、あの、無意識だったけど。普通に、「うちの料理」というか「普通の食事」って思ってたから、全然気付かなかったけど。最近になってようやく、「あ、うちの母親、料理すげーうめぇんだ」って気付いた。

 

のすり:そう思うよ。だってさ、野菜のおかずがまず二~三品くらいない?

 

南帆子:ある。

 

のすり:あって。で、主菜が、肉のおかずがあって。味噌汁、ご飯、みたいな。

 

南帆子:そうだね。

 

のすり大戸屋かと。

 

南帆子:(笑)

 

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花岡家いつかの食卓。大戸屋も顔負けの品数。テーブルいっぱいのおかずたちよ。美味!

 

 

南帆子:本当に、何の祝い事でもないのに、普通の食卓でスペアリブとか出て来る。*1

 

のすり:スペアリブ!

 

南帆子:それこそ週末とか、スペアリブだったり。唐揚げだったり。ローストビーフとか。唐揚げとかさ、なんか最近よく聞くのが、自宅で揚げ物をなさらない、お母様方が。そういう主婦の方々が、増えてるって聞くんだけど。うちは、揚げ物は母親が自分で揚げるね。天ぷらも揚げるし唐揚げも揚げるしトンカツも揚げる。ハンバーグも手でこねるし。ホワイトソースとかも自分で作るもんね。だから、ホワイトシチューとかグラタンってなったら、ホワイトソースから自分で作ってる。固形ルーを使ってない。

 

のすり:すげぇ。

 

南帆子:カレーはさすがに固形ルーだけど(笑)

 

のすり:さすがだね。うちのばあちゃんは、料理すごかったんだけどね。うちの、その、死んだばあちゃん。

 

南帆子:お母さん方のね。

 

のすり:母方のばあちゃん。通称ババは、めちゃくちゃ料理上手くて。美味しかったんだよねー。それこそ、南帆子のお母さんと勝負できるレベルだったというか。*2

 

南帆子:うん。

 

のすり:でもババも外食好きで美味しい店たくさん知ってたし。まあ、そういう記憶もありつつ。基本的にうちの一家は代々外食大好きだから、結構行ってたんだよね。そういう思うと、うちはすごい食道楽なんだなって思って。本当、うちの家って、食に関して糸目付けないところがあって。だから良いもん食べたいときは、「父と母を頼ろう」ってくっついて行ったりとかしてる(笑)

 

南帆子:あの、うちは、大体のものはうちに帰れば食べれる。から。

 

のすり:そうだよね。わざわざ食べに行かなくてもね(笑)

 

南帆子:うん。ちょっと家まで我慢すれば、美味しいご飯が待ってる(笑) 「(家族で)外で食べよう」って選択肢が、あんまり。まあでもやっぱり、母親が用事があったりとかして、ご飯作る時間ないってなればそりゃあ、ね、出来合いのお惣菜買ってきてとか、あるにはありますよ。でも基本……そうだね、母は全部作る、かな。私ね、だから、逆に、お一人コラムでも書いたけど「一人でファミレスに入れなかった」って話したじゃん。たぶんうち、家族でファミレスに行ったことがない。

 

のすり:ファミレスない!?

 

南帆子:普通のレストランとかだったら、旅行行ったときとかにちょっと良いレストランとか。あとは、車の移動中に現地の食堂とかさ。くらいだったら行くんだけど。家族でファミレスって一回も行ったことない。それくらいだったら母が作れる。パスタでも和膳でも。

 

のすり:なるほど(笑) それはね、非常に恵まれてるなぁって思う。料理好きなんだね、お母さん。

 

南帆子:お母さんね、料理好きだと思うよ。というかあの……別にそんな、オシャレなお料理ってそんなに出来なくて。うち、母がすごい酒飲みなんですよ。ご存じかと思いますが。

 

のすり:うん(笑)

 

南帆子: 毎晩、夕飯では酒を飲むんですね。ビールか日本酒か焼酎か。たまにワインか。みたいな。で、お酒に合うおかずを適当に作るだけの人なんですけど。だから、逆にね、お菓子とか作れないんですよ。うちの母って。ケーキとかスイーツ系は全然。

 

のすり:あー。だから本当に、なんだろうな……生きるための食事に限り。

 

南帆子:そうそう。なんか、母が言ってたんだけど。母の母、私のおばあちゃん。は、すごい食の好き嫌いが多い人で。未だにそうなんだけど、すごい偏食家で。母は小さい頃、食卓がほぼ野菜だったんだって。おばあちゃん、牛肉と魚が食べれない。

 

のすり:えーそうなんだ。超菜食主義みたいな。

 

南帆子:なんか(肉や魚を)臭いって言うんだよね(笑) だから、母に「じゃあ何食べてたの?」って聞いたら、やっぱり野菜とか、加工肉とか。

 

のすり:豆腐とかってこと?

 

南帆子:なんか、野菜原料の何かとか。と、ご飯と。でもね、お魚はね、おじいちゃんが魚料理好きだったから。魚のさばき方はおじいちゃんから教わったって言ってたけど。

 

のすり:魚もさばけるんだもんね。

 

南帆子:余裕です母。

 

のすり:かっこいい。

 

南帆子:逆に大人になって自分で料理するようになったときに、「何でも食べれるじゃん」って思ったらしい。

 

のすり:(笑)

 

南帆子:おばあちゃんと離れて暮らして「好きなもの食べれる!」ってなったときに、自分で食べたいものガンガン作るようになったみたいで。その頃からお酒も嗜み始めていたので。今の主婦業に役立ってるのかも知れない。

 

のすり:なるほどね。

 

南帆子:何かを「食べたい」と思ったら、食べに外に出るって選択肢があんまりないかも、うちは。「じゃあ作ろう」って選択肢。「これ食べたいね」ってなったら、「じゃあ作るわー」って母が。「トンカツ食べたい」ってなったら、「じゃあ豚肩買ってくるわー」みたいな。「じゃあトンカツ屋行こう」とかは、あんまり。

 

のすり:そうかあ。うちだと、美味しい店を知っちゃってるのね。「あの店のカツを食いたいから、あそこ行こう」とか。魚食べたい!ってなったら「じゃあお寿司美味しいあそこに行こう」っていう。「焼き肉食べたかったらあの店」とか。結構うちの中でそういう選択肢。や、一応あの、うちの母の面目のために言っておくけど、別に料理が出来ないわけではないんだけども。でもやっぱりね、外食の美味しさも知っちゃってるから。何かイベントとか、出かける用事があった時には「せっかくだし、じゃあ美味しいもの食べよう!」ってなって家族で出掛けるね。やっぱり食全般が道楽。

 

南帆子:うんうんうん。

 

のすり:でも……さ、外食って高いんだよね(笑)

 

南帆子:うん、高い(笑)

 

のすり:私、今の……自分だけだとさ、食道楽にはなかなかなれないから。自炊の安さを、一人暮らしして知ってしまったから。今は自炊ばっかやってるね。外食あんましなくなった。

 

南帆子:たぶんうち、その、外食があんまりないっていうのは……母も料理好きだけど、たぶん、父もそんなに外食好きじゃない。

 

のすり:へえ。お家で食べるのが良いんだ?

 

南帆子:そう。うちもね、母は外食も好きなんですよ。私も、外食が嫌いってわけではないんだけど。父がね、結構外食したがらないんですよ。お家で食べるのが好きで。まあ父は、農家の出なので。

 

のすり:農家。

 

南帆子:それも関係あると思うんだけど。父はね、外食するとしたら、定食屋くらいしか行きたがらない。こう、昔ながらのというか。ご飯とお味噌汁とおかずと、みたいな。

 

のすり:確かに食にそんなに道楽を求めてない感じがするね、南帆子の父は。

 

南帆子:そうそうそう。本当質素な、武士みたいな。

 

のすり:武士。

 

南帆子:武士みたいな食を好む人なんですよ父は。だから、「サイゼリヤとか行っても俺の食えるもんがない」って言う。「パスタとかピザとか、食事で食べるもんじゃない」みたいな。

 

のすり:そんなに!?(笑)

 

南帆子:夕飯には必ず白いご飯とお味噌汁がないとダメなんですよ。だから必ずうちには白いご飯が。炊いてあったり冷凍してあったりだけど、必ず白いご飯は切らさないようにしてて。でも私とか母は、別に……あの、夕飯がパスタとかピザとか、ラーメンとか、でもいいよって人なんだけど。父はもう夕食だけは白いご飯じゃないとダメなんですよ。

 

のすり:武士だ(笑)

 

南帆子:逆に今さ、この東京にさ。定食屋さんて、本当に探さないとないと思うんですよね。昔ながらの定食を出す定食屋さんて。でもさ、だったらお家帰ってくればあるんですよ。「家帰ればあるじゃん」ていうのが父にはあるんだと思う。で、それを母も分かってるから、そういう食事を用意するし。本当に父がよく言うのが、「母ちゃんの料理がいい」って。「母ちゃんの料理で充分じゃん」て。「うちの料理が一番美味しい」って、本当によく言ってる。たまに、たまーに外食する機会あっても、「なんかこんなオシャレな良い肉食べても俺味よく分かんないけど、母ちゃんの作る茹で豚美味しいよね」みたいな。

 

のすり:あー(笑) 良いね、なんか。その感じ。やっぱり手料理って嬉しいし。それで美味しいなら充分だよね。

 

南帆子:そうそう、そういう感じ。

 

花岡家餃子パーティ

 

のすり:今ふと、花岡家で餃子パーティーしたの思い出した。

 

南帆子:しましたねー(笑)

 

のすり:あれね、楽しかった。

 

南帆子:餃子、食べましたよね、うちでね。

 

のすり:あれ超面白かった。なんか不思議な、感じだった。「私なんでここにいるんだろう」って思いながら(笑)

 

二 人:(笑)

 

帆子:あの時ね、ちょっと大変だったんですよ。あの……「橋田来るよ」って、父に言ったら。「ねぇ橋田さんてさ……同棲始めたのか?」みたいな、話をし始めて。

*3

 

のすり:やば(笑)

 

南帆子:あの餃子パーティーは、年越す前ですよね?

 

のすり:まだしてなかったね。

 

南帆子:そう、「まだ一人暮らしだよ」って言って。「まだ同棲話をしてるくらいだよ」、くらいの頃で。「年を越してからじゃないかなぁ」みたいなことを、言って。

 

のすり:うん。

 

南帆子:もう、父の顔がすごい曇ってて(笑)

 

のすり:(爆笑)

 

南帆子:私と母で、「あのさぁ、他人様の娘がいらっしゃるんだから、そんなさぁ……説教とかしないでよ」って宥めて。

 

のすり:いや南帆子のお父さんね、すごい可愛いんですよね、私の中で(笑)

 

南帆子:(爆笑)

 

のすり:わざわざそんな、余所の娘のためにね、顔を曇らせるなんてそんなね、すげーなんか、なんか沁みてくるなあって。

 

南帆子:あのね、少し話飛ぶけど。母がね、ご近所の奥様方にね。「娘さんそろそろ結婚じゃないの?」って話されたんだって。「もうすぐ30だし、彼氏さんいたよね?」みたいな。で母が、「別れちゃったのよー」って、話になるじゃないですか。「え!? 同棲してないの!?」って言われたんだって。

 

のすり:おや。

 

南帆子:その奥様方はね、皆お子さんが娘さんたちで。皆、同棲からそのまま結婚した娘さんたちをお持ちの奥様方で。「え!? 同棲してないの!?」「二十歳超えて彼氏出来たら同棲でしょ!?」みたいな感覚の奥様方で。

 

のすり:逆に偏りがあるけど(笑)

 

南帆子:逆にね(笑) で母が、「うちの娘はそんなに貯蓄もないし、旦那が同棲とか許さないタイプの人だから、同棲の話は出なかったのよ」って言ったら「そんなの親が同棲させちゃえば勝手に結婚するのよぉ」って言われたんだって。「って言われたよ」って話を母がしたときの父の顔。すごかった。もう、生きた毛虫を食ってるんじゃないかくらいの。

 

のすり:苦虫(笑) そんな嫌なんだね。同棲がダメなの?

 

南帆子:同棲がダメらしい。父の中で。「じゃあ結婚しろ! 中途半端な関係はだらしない!」みたいな。

 

のすり:「契りを結べ!」ってこと?

 

南帆子:たぶん。

 

のすり:武士だね。

 

二 人:(爆笑)

 

南帆子:本当に。典型的な日本男児、みたいな。

 

のすり:そんなお父さんと、餃子をつついた思い出がね。

 

南帆子:餃子つついたね。

 

 

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餃子! 仕込みは南帆子がやったらしいぞ

 

 

のすり:そのときは全然、説教とかはされなかったですけど。

 

南帆子:させなかった(笑)

 

のすり:なんか、面白かった。南帆子がお母さんと、ちょいちょい痴話喧嘩挟みつつみたいなのも。

 

二 人:(笑)

 

のすり:母「もう焼けてんじゃない?」南帆子「いやまだまだ! まだだから!」とかさ(笑)

 

南帆子:「まだ中に火通ってないから!」みたいな(笑)

 

のすり:父「(箸でつつく動作)この辺は大丈夫なのか?」

 

南帆子:「父さん毒味」「父さんなら多少生でも大丈夫だから食べな」っつって。

 

のすり:そういうやり取りがね、なんかすごい面白かった(笑)

 

南帆子:入りましたね、花岡家の食卓に。

 

のすり:そう、ご飯が終わって「お腹いっぱいだねー」って感じになった時に。お父さんが「この後おやつはないの?」みたいなことを、ぽろっと言ったことがあったんだよね。おやつ楽しみなんだと思って(笑)

 

南帆子:おやつ? お茶かな? うちね、食後にお茶を飲むんですよ。母がお茶を入れるんですよ。大体緑茶なんだけど。お客様がいると、緑茶だったり紅茶だったり、コーヒーだったりするんだけど。お客様がいなければ、基本的に母が急須でお茶を入れるんですよ。

 

のすり:そうなんだ。

 

南帆子:うちね、結構お客様が来るんですよ。うちの父と母の友達というか。父と母は、バイクで知り合ってるんだけど。(バイクのアマチュアレーシングチームのレーサー(父)とタイムキーパー(母)だった。)そのレーシングチームの仲間が、今でも付き合いがあって。結構、年末年始とか良く来るんですよ。10人くらい集まるんだけど、その宴会料理も母が全部作るんだけど。

 

のすり:へー。すごいな。

 

南帆子:その、集まった人達が、お菓子をね、持ち寄るんですよ。母の手料理食べ終わったら皆で食べよー、みたいな。それに合わせて母がお茶入れたりコーヒー入れたりして。宴会が終わったらそれで〆る、みたいな。その感覚がずっとあるから、うち。だからたぶん、「お客様が来たら〆に、お茶の時間を」っていう。

 

のすり:なるほど。

 

南帆子:その時間、結構楽しいんですよね。

 

のすり:いいよね。なんかね、他人様の家にお邪魔して、ご飯ご馳走になるっていうの、好きなんだよね(笑)

 

二 人:(笑)

 

のすり:なんだろうな、その、家族の感じが見えてね。面白いなって思う。なんかその、家族の中に、いる、自分は何なんだろうって思いながら居るのが割と好き。

 

「トイレにスリッパがあるのは普通だよ」

 

南帆子:私、「え?」と思ったのがさ。鐸木さんうちに来てさ、トイレを、借りたときにさ。うちトイレにスリッパがあるんだけど。「トイレにスリッパがあるときはどうすればいいの?」って言われたときに、「え?」って。

 

のすり:(爆笑)

 

南帆子:いや言ってたじゃん! なんかその、元々部屋のスリッパを履いてて。トイレ行ったらスリッパがあって、「え、このスリッパどうすればいいの?」みたいな。「嘘でしょ!?」と思って。そんなことあるか? と。

 

のすり:うちスリッパねぇもん。

 

南帆子:いや、トイレにはスリッパあるの普通だよ。あるもんでしょ?

 

のすり:いやそもそも、うちの実家はスリッパがない。スリッパを履くという習慣がまずない。でも花岡家に行ったら、まずスリッパがある。

 

南帆子:まずお客様にはスリッパをお出しします。

 

のすり:お出ししてくれ。履きます、と。履きますと、もうその時点で私の中では『スリッパがあるというイレギュラー』だから。そのイレギュラーな状態でトイレに行くと、なんともう一足スリッパがある。「これは……!?」

 

南帆子:(爆笑)

 

のすり:だってもうスリッパ履いてるし!

 

南帆子:普通じゃない? スリッパ履き替えて普通に……トイレ、行くでしょ?

 

のすり:行か、ない、ね。

 

南帆子:えー……?

 

のすり:だからそのね、トイレのスリッパと、居間のスリッパが分けられていることがまず、私の中でイレギュラー中のイレギュラーというか。

 

南帆子:うそーん(笑)

 

のすり:「す、すごい! そこでスリッパ履き分けるなんて……!」という事態。

 

南帆子:そんな。

 

のすり:だって、今日南帆子は鐸木宅にいるけどさ、トイレにスリッパなかったでしょ?

 

南帆子:ないね。

 

のすり:それで、南帆子は「なんでないの?」ってなるの?

 

南帆子:なる。

 

のすり:そうか……。他の人の家ってスリッパあるの?

 

南帆子:あるよ。

 

のすり:うそやん。

 

南帆子:や、一人暮らしの、ユニットバスとかならアレだけど。同世代の人達くらいの生活水準だったらなくてもおかしくはないけど。でも、あのね。あのトイレにはあってもいいトイレだよ。……なんで便座にカバーかけてないの?

 

のすり:(爆笑)

 

南帆子:便座蓋と、便座の下の、あの、カーペット。と、スリッパ。

 

のすり:そこは割とサボってるな。

 

南帆子:あっておかしくないんですよ。バストイレ別だし。ユニットバスにないのは分かるよ? 一人暮らしとか。でも結構あの、ちゃんとしてる部屋、じゃないですか。バストイレ別の、ちゃんとしたお家で。「あれ、ない」と思って。

 

のすり:うむ……。

 

南帆子:「あら」って。

 

のすり:分かりました。買います。

 

南帆子:(笑)

 

のすり:いやでもね、それだけ、花岡家は家がしっかり整ってるんだなってところが。尊敬します。しっかりお家を守っていて。

 

南帆子:ありがとうございます(笑)

 

のすり:でも本当にね、あの時は焦った。「このスリッパはどうすればいいんだ……!」って。こんなにいっぱい、その、なんだろう……使うべきものがある、とき。

 

南帆子:使うべきもの(笑)?

 

のすり:何て言えばいいんだろう……まあ、普通に考えればさ、トイレの前でスリッパを脱ぎ、スリッパを履き替え、トイレを済ませる。だけなんだけど。「自分ちでそれするんだ」みたいな。

 

南帆子:あー。

 

のすり:逆にね、あのね、ホテルとかなら分かるのよ。

 

南帆子:旅館とか。

 

のすり:旅館とかね。

 

南帆子:もう私ずっと、ちっちゃい頃からそうだったから。分かんない、その感覚。

 

のすり:良いことだよ。

 

南帆子:なんかその、本当、何ていうか……礼儀、とか。には、うるさい親だったかも知れないね、うちは。礼儀というか……常識的なこと、というか。

 

のすり:その分たぶん、南帆子の中の常識って、質が上なんだなって思うところがある。うちが低いのか分かんないけど(笑)

 

南帆子:うーん。

 

のすり:うちは、無くても困らないものは無くてもいい、って感じ。だってスリッパなくても生きていけるじゃん。はっきり言って。

 

南帆子:いや、私も自宅でスリッパ履かない人なんだけど。

 

のすり:そうなの?

 

南帆子:普段はね。でも父と母は必ずスリッパ履いてる。

 

のすり:それはもうね、育ちがいいと思う。やっぱり。私はそもそも、生まれたときから自分ちでスリッパ履いて生活するって習慣がまずまずないから。別に裸足でもべらぼうに汚いわけでもないし。うちの中で無くてもいいものなんだよ、スリッパって。だからね、その……無くてもいいものが、ある、っていうことが。なんか、私はその……それは、良いことだなって思うわけ。なんか……。

 

南帆子:無駄なものがある?(笑)

 

のすり:いや、なん、なんて言うの……(はっとして)文化的だな!、みたいな。

 

二 人:(爆笑)

 

南帆子:はいはいはい。

 

のすり:無くても生活出来るものが、ちゃんと用意されていて、充分にあると。非常に文化的だなと思って。そこにすごい感動した覚えが、ありますね。

 

南帆子:なるほどね。あの、うちの母は……教育ママではないんだけど。その、勉強を強要ってタイプではなかったんだけど。礼儀とか、常識、とかには、うるさかったかも。ちっちゃい頃から。

 

のすり:挨拶とか?

 

南帆子:も、そうだし。なんか、家の中ではそんなことないんだけど、家では普通に、好きにだらだら過ごしてるんだけど。たまーに、だからその、外でご飯を食べるときとか。あの、元々母も働いていた人だったから。両親共働きの家だったんだけど。だから、たまに父は仕事で母と私しか家にいない、ってタイミングがあると、たまにデパートのレストラン街とか、母と二人でって機会もあって。そのときには、母はすごく恐かった。

 

のすり:「行儀良くしなさい」みたいな?

 

南帆子:そう。ちょっと肘ついちゃうと、肘をパシンッ! みたいな。

 

のすり:おお。

 

南帆子:すごいそれが恐くて。家ではされないのに。だから外で食べるのが、私もそんなに好きではなかったかもって記憶がある。

 

のすり:緊張しちゃうんだ。

 

南帆子:緊張しちゃうから。そう。

 

のすり:なるほどね。そういう躾の元で育ってきたんですね。

 

南帆子:本当家ではそんなこともなかったんだけど。外だと。

 

のすり:外で恥をかかないようにっていうのがあったんだろうね。

 

南帆子:だろうね。

 

のすり:そんな外で、「ちゃんとしなさい」みたいな言われたことないな(笑)

 

南帆子:放任(笑)

 

のすり:自由だった。でもなるほどね。ちゃんとしてらっしゃる。

 

南帆子:良し悪しはあるだろうけど、でもまあまあまあ。まあ。まあ、あの、うちの母は料理上手いです。

 

のすり:(笑)

 

南帆子:だってその、さっき言ったバイク仲間とかから。定年後? リタイア後、というか。「年取ってから食堂でもやれば?」って言われてる。

 

のすり:絶対花岡母の食堂あったら行くわ!!

 

南帆子:おいでよ(笑)

 

のすり:良い。本当に。是非考えて下さい。

 

南帆子:伝えておくよ(笑)辺鄙な場所で、たぶん週三回くらいしか開けないくらいの。

 

のすり:めっちゃいい老後だねそれ

 

南帆子:週三のランチタイムくらいしか開けないような、幻の食堂的な(笑)

 

のすり:是非父とね、一緒にね、店を切り盛りして。

 

南帆子:ね。なんか、やればいいのにね。

 

のすり:いいな、絶対通うよ。

 

南帆子:是非(笑)

 

 

*話題:鐸木家と花岡家*おわり*

 

 

【公演情報】

チケット発売中!!

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​ 

はじめに申し上げておきますと葬式の話ではありません。
誰もしんでいませんし、これから誰もしにません。

ひとがひとりいなくなる。ただそれだけの話。
いるはずだった人がいなくなってしまった三人の女のお話です。


​​(作演より)

 

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京央惨事スタジオ公演
​「おくやみ(仮)」

 

作・演出 
鐸木 のすり(京央惨事)

出演
花岡 南帆子(京央惨事)
阿部 未和
佐藤 彩乃

 

会場
東中野バニラスタジオ
東京都中野区東中野1-14-27 MRビルB1​

公演日程
2018年8月24日~26日
24日 18:00/20:30
25日 13:00/17:30/20:00
26日 14:00/19:00
​※受付・開場開始は開演の30分前です

※上演は約60分を予定しています。

​チケット料金
前売・当日 2000円

​ご予約はこちらから

カルテットオンライン

おくやみ(仮) 予約フォーム

 

 

HPやSNSも随時更新中。

 

 京央惨事HP
https://keiosanji.wixsite.com/ko3

 

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↓以下、脚注↓

*1:普通の食卓でスペアリブ:スペアリブは花岡母の得意料理。スペアリブ、唐揚げ、ローストビーフもすべて自ら作ります。

*2:ババ:母は小さい頃働きに出ていたので、生粋のおばあちゃん子として育った鐸木。ババの飯で育ったと言っても過言ではない。

*3:父「同棲始めたのか?」:花岡父は同棲反対派。鐸木の同棲話も我が子のように嫌がっていた。花岡が「他人様の娘なんだからほっとけ」と言い放つと「お前の友達は俺の娘みたいなもんだろ」と言い返された。花岡は爆笑したが花岡父は実に真剣であった。