話題:桜の下に埋まりたい
のすり:桜咲いちゃったね。
おセンチ南帆子:桜は好きなんだ。
のすり:なんだその名前。
おセンチ南帆子:生まれ変わったら桜になりたい。
のすり:名前で自己主張するんじゃない。*1
南帆子(戻した):いや桜は好きですよ。日本人の情緒。
のすり:私も好き。こう、量が多いのがいいよね。
南帆子:ソメイヨシノって、花と草が一緒に生えないんだよ。だから花の量がみっちり感じるらしいよ。
のすり:今の時期大きい公園行くとぶわあって咲いてるじゃん。よいね。清々しい。
南帆子:桜って本当いつの間にか咲いていつの間にか散ってるもんね。パッと。
のすり:散るのは早いんだよなあ。桜の思い出ってある?
南帆子:うーん、思い出らしい思い出は……なんか高校生の頃に「(南帆子は)夜桜みたい」ってロマンチックなこと言われたことありますがね。
のすり:なにそれ(笑)
南帆子:「昼間じゃないんだよ! 夜桜! の、花びら!」って力説されたけど、よく分からない(笑)
のすり:誰に言われたの?
南帆子:同じ部活の女子に。
のすり:女子か。男じゃないのね。
南帆子:そんなこと男子から言われたらドン引きだよ。
のすり:話蒸し返すけど、おセンチなんですか?
南帆子:センチメンタル。
のすり:なんかあったの?
南帆子:いや、おセンチメンタルに「桜は美しい」って言ってみただけだよ(笑)
のすり:そういうことかい。
南帆子:センチメンタル引きずると、私墓石じゃなくて樹木葬*2にして欲しいんだ。もちろん桜で。
のすり:樹木葬? 樹の下に埋めてもらうってこと?
南帆子:そうそう。墓標を樹木にしてもらうの。
のすり:へえー。墓石の代わりに桜の木?
南帆子:そうそう。墓石になんか文字書くのとか流行ってるじゃん。そういうのいらないから、一本桜を植えて欲しい。
のすり:素敵ですな。
南帆子:で、毎年春になって桜が咲いたらその下で花見とかしてもらいたい。
のすり:南帆子を弔う宴を。
南帆子:思い出話とかに花を咲かせてほしい。
のすり:じゃあ花岡さん、結婚できないんじゃないですか。
南帆子:なんで?
のすり:夫と一緒の墓に入らないの?
南帆子:夫と隣り合わせの桜になれたら幸せだろうけど、そこは強制しないよ。夫がきちんと墓石に入りたいならそれでも良いし。
のすり:そこは譲らないんだ(笑) ほら、万が一長男と結婚してしまったら、今の決まりだと先祖の墓に入らないといけないじゃん。
南帆子:うーん、今は先祖代々の墓ってなかなかないよね。各家庭でご夫婦だけで入るのが多くて。特に都会は。うちの父の実家とかだと、先祖代々の墓だけどね。
のすり:そうなんだ! うちは母方も父方も先祖の墓があるからさ。地方出身の人とかは実家の墓あるんじゃないかなあ。
南帆子:あると思うよ。でもその地方出身者が、自分の実家の墓に戻るのか、だよ。多くは東京で伴侶見付けてその伴侶との墓を東京に新しく建てるのが今は常だよ。
のすり:ああそう。自分とこの墓に入らなきゃいけない決まりって、今そんなに厳しくないんだ。
南帆子:うちの父も、亡くなったら墓は東京で良いって言ってるし。秋田でなく。そもそも父を秋田の墓に入れたら、母も秋田の墓に入れることになるし。母と二人で東京の墓で良いって言ってるよ。
のすり:墓参りしに秋田わざわざ帰るの大変だもんね。正直言って、私も入るなら夫婦の墓か、母方の祖母ちゃんが入ってる先祖の墓に入りたい。なんていうか、見知った人と入りたい。結婚相手の先祖って、嫁からしてみればもう他人じゃん(笑)
南帆子:でも元来、結婚てそうゆうことだよ。特に女は。鐸木さんは結婚したら橋田家の墓には入れないんだよ。旦那と二人の墓に入ったとしても、それはもう橋田家の墓ではなく旦那の家の墓な訳で。
のすり:墓場といいますからね結婚は。いや、いいんだけどね。私そういう古めかしいしきたりに甘んじたい方なので。でも、赤の他人と一緒の墓に入るのって、普通なぜ?って思うよね。夫ならまだしも。問答無用に血の繋がりのない人の墓に入らなければいけないって。だから、結婚って時点で死後の居場所まで決められてしまうわけだから、よっぽどの覚悟を持ってその家に入りなさいよってことだよね。
南帆子:まあそういうことだよね。
のすり:少し昔だったら「墓石の代わりに桜の木を」なんて、きっとお話にならなかったね。
南帆子:元々欧米の文化だからな(笑)
のすり:そうか。日本ってやってるとこあるの?
南帆子:あるよ。結構。今は定着しつつある。
のすり:すごいねー。自由だなー。そもそも欧米って、墓って個人か?
南帆子:たぶん個人。土葬だし。だから樹木葬もしやすいんじゃないかな。
のすり:なるほどね。土葬からの「木生やそう」という。日本は火葬だからな。ツボに入れちゃうし。
南帆子:火葬後のお骨拾いやったことある? 骨の説明されるやつ。*3
のすり:あるある。
南帆子:喉仏と指の骨だけは大事ってやつ。あれ聞くと、葬式は仏教でやって欲しいと思う。でも埋葬は樹木葬で(笑)
のすり:なんかややこしいな(笑) 焼いて土に埋めるのか?
南帆子:骨壺には入るよ。でもそれを埋めた後は桜の木を植えてもらう。日本の樹木葬は一般的にそういうやり方だね。
のすり:ほうほう。埋めるまでは仏教に則る。
南帆子:もともと私無宗教だけど、キリスト教と仏教なら仏教の方が教えが響くんだよね。だから葬式は仏教でやってもらって、死んだ後は桜になりたいので。
のすり:死んだあとは桜になりたい(笑) 名言めいてる。
南帆子:『願はくは 花の下にて 春死なん その如月の 望月の頃』ってヤツですな。*4
*話題:桜の下に埋まりたい おわり*
↓以下、脚注
*1:「名前で自己主張するんじゃない」:お前が言えた事か
*2:こんなサイトもありました 樹木葬がわかる!おすすめ霊園ガイド
*3:火葬後のお骨拾い:火葬場によって火夫さんが焼け残ったお骨の部位の説明をしてくれる。喉仏は本当に仏さんが座っているような形に見える(言われてみれば)。お骨をみんなで骨壺に収めた後、一番最後に喉仏がしまわれる。ちなみに鐸木の祖母ちゃんは大食漢+ずっと卓球をしていたからか「骨が非常にしっかり残ってますねー。でかい。すごい丈夫だったんですねー」と言われ、骨壺がパンパンになった。
*4:『願はくは 花の下にて 春死なん その如月の 望月の頃』:西行法師の句。「死ぬんだったら二月(旧暦の二月なので今の三月頃)に、桜に下で死にてえなあ。しかも満月とか出てたら最高」みたいな意味。