雨【花岡】
前回とは打って変わって何ともシンプルな話題である。
今の私は雨が嫌いだ。
傘で荷物が増えるし元々忘れ物が多い私の忘れ物がさらに増える。傘なんて今までにいくつ犠牲にしただろうか。父にねだって買ってもらった五千円した傘をどこかに置き忘れて来て未だに帰って来ていない。
湿気で髪の毛はうねるし低気圧で体調を崩しやすくなるし、何より頭痛持ちの私にとって雨は大敵である。一度頭痛の発作が出てしまうと外を出歩くこともままならず、ただただ室内で悶絶している。くそ。
そんなこんなで、今の私は雨が嫌いだ。
昔は好きだった。
雨の降る日にずっと家の中に籠ることが大好きだった。雨音を窓辺で聞きながらぼーっとする。雨の日(できれば小雨くらいが良い)の昼間に電気を点けず長風呂することが大好きだったのだが、この感覚を分かってくれる人はいるだろうか。なんだか非日常的でとても癒される。これは未だに好きかも知れない。
あとは紫陽花が好きだ。梅雨になればそれだけが楽しみだ。毎年、紫陽花狩りに行く。場所は大体鎌倉。
鎌倉にあるお寺に、私の兄や姉として生まれてくるはずだった水子たちが眠っている。幼い頃の私はよく母から「お兄ちゃんたちが生まれていたらなほはきっと生まれていなかったのよ」と聞かされて育った。(母は婦人系の臓器が弱い。きっと私も遺伝しているが。)鎌倉には勝手に親近感を覚えている。溢れる日本情緒もその一端ではあるのだろうが、なんだかとても懐かしく思う。
話は逸れたが、昔は「雨」という事象はノスタルジックで叙情的でロマンがあった。
思うに、その頃の私はまだ余裕があったのだと思う。
「雨」を楽しむ余裕。「雨」によって狂わされる事のない時間。「雨」を疎ましく思わずに居られる程度の荷物。「雨」で崩す事のない体調。
今はもう駄目だ。「雨」が降ると電車遅延で予定は狂わされ、荷物は無駄に多くなり、体調不良から鬱屈な気分になる。化粧は落ちやすくなるしヘアセットも決まらないし最悪だ。
色んなものを抱えている。あの頃よりも、良くも悪くも。
この歳になって振り返れば「私雨好きなんだよね」とか言っていた自分に乾いた笑いがこみ上げる。
乾いてしまったのだなぁ。それが大人になるということなのだろうか。
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大切なものを抱えすぎて生きにくい人へお送りする京央惨事本公演がございます。
なんか捨てられないものを持っている人ってそれだけで生きにくいのに、だけどそれは悪ではない。そんな気持ち。
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京央惨事 本公演
『テースターズ』
2019年3月22日(金)~25日(月)
於・新宿眼科画廊
脚本・演出
鐸木のすり(京央惨事)
出演
伊藤えりこ(Aripe)
加藤ひろ海(Spaceらぼ。)
後藤なつこ(Spaceらぼ。)
延原奨磨
花岡南帆子(京央惨事)
タイムテーブル
22日(金)19:30-
23日(土)14:00-/19:00-
24日(日)14:00-/19:00-
25日(月)19:30-
受付開場開始/各上演30分前
上演時間/70分予定
チケット料金
前売・当日 2,500円
チケット取扱い カルテットオンライン
https://www.quartet-online.net/ticket/ko3z201903
※チラシに付いている割引券を持参いただくと「500円割引」致します。
ぜひご活用くださいませ。
次は鐸木さん、【枯渇】で。