話題:こどものころの話
南帆子:はい。
のすり:どうやら三人の小さい頃の境遇が似てるんじゃないかみたいな話になったじゃないですか。ちょっとそこ掘り下げようかと思って。皆さんどんな子供時代でしたか?
南帆子:なんか小学校上がるまでは怖いものなしくらいの、めちゃくちゃ明るい、天真爛漫な子だったんですが、学校三年生くらい、ですかね。暗くなりましたね。
丸 元:僕は、ずっとそんな暗くなるってこともなかったんですけど。まあ、ずっと一人でしたね。
のすり:いやぁ私もですね、友達がいなかったんですよ。
南帆子:友達いないな、ここ三人(笑)
のすり:本当に友達いなかったねー! 高校生が一番いなかったかも知れない。
南帆子:高校生一番いたな、友達。
丸 元:僕も高校生が一番。
のすり:えっ。
南帆子:小中がいなかった、友達。
丸 元:そうですね。僕も小中いなかったです。思い返すと結構なんか……自分勝手というか、わがままで。それで周りの人は離れて行って。でもそれに気付かず「俺はこういうもんなんだな」って「周りに人が集まらない人種なんだな」って。一人寂しく虫捕ったりとか。
のすり:その時から虫。*2
丸 元:そうですね。小さい頃からやっぱり虫が好きだったんで。
のすり:私逆に小学校が人生のピークだったかも知れない。中学校は小学校からの友達がいたけど、高校はもう、友達どう作ればいいか分からないかった。
丸 元:高校、どうやって過ごしてたんですか?
のすり:ケータイ、マンガ、とか……。なんだろうな、グループの入り方が全く分かんなかった。女子はグループ作るじゃないですか。グループどうやって入ったらいいの? って。
丸 元:確かに。グループって気付いたら出来てますよね。
南帆子:私部活だった。高校で演劇部入ったから。それでなんか勝手に友達が出来たな。まあ高校は、楽しかったですよ。
丸 元:高校は楽しかったですね。今も仲の良い親友が三人くらいいるんで。
南帆子:私も親友が何人か。
のすり:高校……私、中学校まで演劇部やってたんだけど、高校では「演劇やめよう」って思ったんだよね。で何を思ったかバトミントン部に入ってしまって。「体育会系になろう!」と思ったの。そしたらまあ、演劇部上がりのもんだからド文系だから。全然体育会系の人たちと馬が合わず……っていうスタートを切ったせいでグループもどこにも属せず。
南帆子:無理しちゃって。
のすり:無理しちゃったね。続かなかった。
丸 元:なんちゅーか僕、まあたぶん恐らく、お二方は「変なヤローだ」と思ってるんでしょうけど。
の・南:ハイ。
丸 元:まあそれは間違いないんですけど。その「変なヤロー」になったのは、高校の親友の影響が結構大きくて。僕的にそいつすごい面白いヤツなんですけど、すごい変なヤツで。そいつともう、三年間ずっと、四六時中一緒にいたくらい仲良かったんで。そいつのおかげで、人と話すことが、まあ好きになれて。結局、仲良くしてた親友の周りに人が集まってたんで、勝手にグループが出来てた。
のすり:へー。
南帆子:その、小中とかは、友達いなかったって言ってたじゃないですか。何して遊んでたんですか?
丸 元:虫捕ったり……。
南・の:やっぱり虫なんだ。
丸 元:夏休みとか、ずっとデパートに行ってましたね。当時野球が好きで。グローブとボールを持って、「野球の練習をしてくる!」って伝えて、デパートに行って。夕方くらいまで一人でおもちゃ眺めて。遊んで。
のすり:へー。
南帆子:あの休み時間てあるじゃん。二十分くらいあるやつ。あれが憂鬱でしょうがなかった。どうしていいか。どうやってこの時間を潰せばいいのか分からなくて。でもなんか、よく分かんないけどうちの小学校は「休み時間は外に出ろ」って小学校だったんですよ。
丸 元:「校庭で遊べ」っていう。
南帆子:そう。学校の中に残ってるとまあ怒られるから。とりあえず靴は履くんですよ。で、正面玄関出てちょっと階段になってるところにずっと一人で座ってアリを見てるとか。
のすり:アリ見てる(笑)
南帆子:そういう小学校時代でしたね。絵に描いたような友達のいない子でしたね。
のすり:小学校はわりと活発だったな。すごい目立ちたがり屋だった。前で発表する人やりたくて。『朝礼で作文読む人』とかすごいそういうのやりたがって。皆なんか手挙げないからさ「じゃあやります」って立候補してやったりとかしてたんだけど。中学校に入ってから、途中でなんかね、心が折れたんだよね。
南帆子:何で?
のすり:その、なんか……「調子乗ってるんじゃん自分」って、ハッと気付いてしまって。そこから「そういうことするのは恥ずかしいことだ」と思って。で、どんどん下がっていった。中学校は何だかんだ演劇部にはいたんだけど、でもすげー地味。で、極めつけに高校友達出来ない。
南帆子:(笑)
のすり:なんかさ、一応皆「子供の頃ぼっちでした」って話だけどさ。丸元さんだけ絶対に毛色が違う感じがするんだよね。
南帆子:そうそうそう。
のすり:アウトロー野郎みたいな。
丸 元:たぶん、あれなんですよね。友達をどこから友達と呼ぶ? ってことにもなっちゃうんですけど。『固定の友達』がいなかったんですよ。要は、デパートとか遊びに行って、知らない小学校の子たちと仲良くなって、一日だけ遊ぶんですよ。でも出会いはそれきり。
のすり:一期一会みたいな。
丸 元:短い付き合いだと「お、コイツ面白いじゃん」ってなるけど長い付き合いだと「コイツ鬱陶しいな」って思うっていう。
のすり:複雑ですなぁ(笑)
南帆子:複雑。
丸 元:まあ、そんなに苦じゃなかったですけどね。でも中二、中三くらいになったときに「あれ俺、ぼっちじゃね?」って思って。
のすり:ふと気づいた。
丸 元:「あれ俺ぼっちだ!」と思って。バスケ部だったんですけど、その部活のメンバーとも仲悪くて。中二くらいの時、仲すげー悪くて。
のすり:なんでそんなに仲悪いんだ(笑) バスケ部で仲悪いって結構、致命的じゃない?
丸 元:パスが回って来ない。
の・南:(爆笑)
のすり:恐ろしい状況だよね、それね。
丸 元:でもパス回って来ない、っていうことに、僕は「あ、俺が良い位置にいないし、一番下手だからな。皆上手いからな」って俺は思ってたんですけど。よくよく考えると嫌われてたなーって。
のすり:辛いわー。辛いなー。
南帆子:辛い。
丸 元:アホだったんでしょうね。
のすり:結論『アホ』。
丸 元:そこから「人を大切にしよう」って思いました。
のすり:いいこと!
南帆子:いいことを学びましたね。
のすり:でも確かにさ、その『ぼっち時期』があるから今は「人、大事にしよ……」ってふと。
南帆子:思うね。
のすり:その瞬間あるよね。
南帆子:ある。
のすり:ぼっちは寂しいからね。
丸 元:でもたぶん、僕、今完全ぼっちになっても、僕は生きていくんだろうなって思います。
のすり:虫食ってね。
南帆子:虫食って生きてくの?
丸 元:あの、全然……寂しいとは思うと思うんですけど。でもその、一人の期間もあったって考えると、どっちでも生きて行けんじゃないかなって思いますね。
南帆子:一人好きですか? 割と。
丸 元:や、どっちも好きです。正直本当にどっちも。一人も好きですし、皆といるのも好きだし。どっちにもその良さがあるとは思ってて。
のすり:うんうん。
丸 元:まあ、一人になったら間違いなく虫食いますね。
南帆子:一人にさせちゃダメだ!
丸 元:もう皆が知らない虫を食ってやろうと思います。
南帆子:怖い怖い怖い。
のすり:(丸元さんは)一人で生きて行けそうだもん。
南帆子:サバイバーだな。
丸 元:ブログ、開設しますよ。
の・南:虫食いブログ!
丸 元:僕がアマゾンに行ったら、そういうことだと思って下さい。*3
* * * * * * * *
のすり:そう、家族構成をきいてみようと思うんだけど。
南帆子:私ひとりっ子。父、母、私。猫。
のすり:私は、気がついたら母しかいなかったんですね。で、ひいじいちゃんとひいばあちゃん、ばあちゃんとじいちゃんたちに囲まれて、ちっちゃい頃は生活してて。で、小学校で母が再婚し。で、父が出来て。で、今妹が二人いるんだけど、10歳と12歳離れてます。今中学3年生と高校2年生。
南帆子:妹さん大きくなったね……。
のすり:そう(笑)だから父、母、妹が二人。っていう構成ですね。
丸 元:僕は今は、父と義母と。
のすり:あ、義母なんだ。
丸 元:僕、中三の頃に母親を亡くしてて。で、二十歳の時に親父が再婚して。で、父、義母、兄、姉、俺なんです。三人きょうだいの末っ子なんで。
のすり:兄弟は血は繋がってるんだ。
丸 元:そうですね。母親だけもう、高くジャンプしてしまったんで。
のすり:「高くジャンプ」(笑)
南帆子:新しい表現が出た。
丸 元:実の母親は、ものすごいデストロイヤーというか。物をよく、壊すというか。怒ると、特に子供たちの、大事にしてたゲーム機だとか。ぶっ壊して。
南帆子:お母さんが? お父さんじゃなくて?
丸 元:はい。親父はなんか、怒らせると、本当に怖かったんで。親父はちょっと。
南帆子:へー。
のすり:すごいね、母。
丸 元:一回、小学校二年生くらいの時に僕が親父をすごい怒らせてしまって。親父が「やめろやめろ」って言ってることを全然やめないでヘラヘラヘラヘラしてたら、親父がもうブチ切れちゃって。家の前にこう、電柱があったんですけど。結構暗くて。親父アウトドアが好きだったんでキャンプ用のロープがあったんですけど。僕をその電柱にぐるぐる巻きにして。
の・南:おお。
丸 元:秋口ぐらいだったかな……と思うんですけど、ちょっと肌寒くて。「反省しろ」って言われて。親父が家に戻って行って。真っ暗な中ちょっと虫も寄って来て寒いし。体感的に30分くらいですかね。
のすり:辛いなぁ。
丸 元:もう「寒いよ寒いよ」ってなってたら、母親が出て来てくれたんですけど。「あー助かった!」って思ったら俺の目の前に来て、「あんたが悪いんやで」って言って家に戻って行きました。
南帆子:ええええ!
のすり:スパルタ!
丸 元:もう「この世に神はいない」と思いました。
の・南:(爆笑)
のすり:すげえ家庭だな。
丸 元:もうボロボロ泣いて。
のすり:かわいそう。
丸 元:親父が出て来て。「反省した?」って言われて。反省せざるを得なかったので、「しました……」っつって。家に入れてもらいました。
のすり:いやー、すごいね。でもなんだかんだ、どこの家庭もそういう事あるよね。私も昔、パンツ一丁で外に出されたことあって。なんか「学校行きたくない」っつって。着替えてる途中でぐずったからパンイチ。ドアの所で膝抱えて「くっそー」と思いながら、助けを待ってた。
南帆子:私も一回だけ閉め出されたことがありましたよ、母から。
丸 元:一回だけですか?
南帆子:一回だけ。あの、寝なくて私が。「寝ろ寝ろ」言われてたんだけど「寝るのやだ」って言ってたら「お前はもう寝なくていい!」っつって、玄関から閉め出されて。で、泣いてたら、父が仕事から帰って来て入れてもらえた。
丸 元:一回しかないんですか? 閉め出されたこと。僕、両手両足の指の数じゃ収まりきらないくらい……。
のすり:そんなに? そんなに?
丸 元:閉め出されてるんですよ。
南帆子:閉め出されたのは一回だなぁ……。
のすり:まあ女の子だから。
丸 元:うち絶対、叱られる時に「謝るか、出て行くか、どっちかにしなさい」っていう選択肢を与えられるんですけど。三きょうだい全員「出て行く」を選んで。
のすり:強いんだよなー(笑) お姉さんもってこと?
丸 元:そうですね。うちの姉はそんなに怒られることは、したことないんですけど。姉も何回か、小学生の時に「出て行く」っつって。でもたぶん、姉的に何回か出て行った後に懲りて、すぐ謝るようになったんですけど。兄貴と僕はもう、一向に「出て行く」って出て行きました。皆出て行って各々遊んだ後に、お腹空いたり何なりして帰って来て結局謝るんですよ。「ごめんなちゃい」っつって。
のすり:そうなんだ(笑)
丸 元:で、大冒険をしてくる。
の・南:大冒険。
のすり:それぞれだなぁ……。
南帆子:それぞれの子供時代を、過ごしましたねえ……。
(しんみりしたところで)
(ていうか、ぜんぜん公演の話をしていないぞ!)
隣人の収穫は11月18日(土)から
明日からです。
チケットのご予約はこちらから
https://ssl.form-mailer.jp/fms/e37707f5535635
オムニバス公演ふたり芝居
京央惨事 参加作品『隣人の収穫』
2017年11月18日-19日
@新中野ワニズホール
http://wanizhall.net/x_map.html
18日(土)15:00/19:00
19日(日)14:00/18:00
※上演時間約90分
(他2組出場/1作品30分程度)
前売/当日 2500円
https://ssl.form-mailer.jp/fms/e37707f5535635
演出・脚本
鐸木のすり(京央惨事)
出演
花岡南帆子(京央惨事)
丸元浩司
*よろしくおねがいします*
話題:こどものころの話 おわり
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